大悲報
おおきなかなしみが襲ってきた。
よく行くプロントが閉店した。
プロントはチェーン店だけど、わたしには“あのプロント”にたくさんの思い出があって、だからこそたとえ他で全く同じ飲み物が飲めたとしてもケーキが食べられたとしても、喪失感は埋められないと思う。
学生のころ、まだバイトもしてなかったころ。
駅の東口に大きなロフトがあって、その中にプロントの系列のカフェ・ソラーレが入っていた。
おこづかいをやりくりして、たまにそこに入れるのが嬉しかった。
飲み物が10%OFFになるソラーレのEdyカードも作った。Suica以外の初電子マネー。
ロフトが西口に移ってしばらく経った頃、ソラーレがプロントになって再オープンした。
わたしは喜んだ。
店名は違えど、似た雰囲気の系列店ができた!と。
大学生になるとアルバイトを始めたので、
カフェに行ける回数も増えた。
“あのプロント”ではいろんなことをした。
大学の課題はもちろんやったし、卒論も書いた。就職のための試験勉強もした。エントリーシートなるものも書いた。進まなくなるとランブルスコやハイボールなどをそばに置いた。
何もしないこともあった。
数時間いた。うまいことギリギリ満席にはならなくて、いることができた。
母と喧嘩して家に帰りたくないときなど、ほんとうに助かった。
旅行の計画を立てたこともあった。どこを回るか、どう回るか。必ず行きたいところの選択。
その旅行は旅行の前から楽しかった。
“あのプロント”では、わたしのいろんな感情が渦巻いた。焦り、嬉しさ、悲しみ、緊張、安堵、怒り、楽しさ
いま、“あのプロント”だった場所は、中が全く見えない白いパネルのようなものに囲まれて、小さな紙が貼ってある。閉店を知らせるあっけない紙。
写真を見返して、“あのプロント”で、日常のコーヒーやチャイを撮っていなかったことに今気づいた。
寂しい気持ちがする。
お客も結構入っていたし、閉まるなんて微塵も予想していなかった。
ひたすらに、おおきなかなしみだ。